お笑いサタケ道場 第6回公演「SF野試合ガール~宇宙大戦争~」に際し、
代表の佐竹仁から、本公演についてごあいさついたします。



この度、お笑いサタケ道場本公演を10年ぶりに行う事になりました。
10年前、劇団としてはコンスタントに活動していた僕は自分の書きたい事を書き、やりたい事をやっていました。
お客様にも褒めていただいたりして素直に喜び、次はこの作品、その次はこの作品と夢を膨らませて劇団員にもそのことを話していました。

10年前「SOUL MATE」というお芝居をしました。
この作品は戦争中のとある国の少年兵たちのお話でした。
天才的な技術をもった若い戦闘機乗り達が互いに技術を競い、戦績をあげ、そして最後に知ったのは人の命を奪う事の恐ろしさ

最後に主人公のカール・ビュンテ(山本誠子)は大切な友と街の人を逃がすために一人で戦闘機に乗り、持てる力をすべて使い、自分の信念を曲げず空で命を落としました。
物語を語っていたのはその時、助けられた友でした。
おじいさんになっても彼はカールの事を思い、ベンチに座り、その思い出を少年に語り、空を見上げます。

その時のお芝居を観たお客様の一人が冗談交じりにこう言ってくれたそうです。(記憶違いもあるかも知れませんが・・・)
「とっても楽しかった。これで後1ヶ月は生きられる」
僕はとっても嬉しくなり、その後の芝居はと次の構想を考えました。
もっと沢山の人が元気になるような。
でもただ楽しいではなく何か大切なものを感じられる様な作品が作りたいと思いました。
あるお客様が「ここの芝居を見ると帰った後に人に優しくなれる」と言ってくれました。
そんな作品が作れたら、作り続けられたらどんなに幸せでしょうか。

「SOUL MATE」から数ヶ月後、あと1ヶ月は生きられると言ってくれたお客様が本番から2ヶ月過ぎた後にお亡くなりになったと聞かされました。

自分勝手な思いですが、次の作品は誰が観ても、どんな人が観ても、たとえその作品が最後に観る作品であっても、観て良かったと思える作品を作りたいと思いました。
そして10年間、ある答えを探して考え続けました。
プロット(あらすじの様なもの)は無数に生まれ、A4サイズで100ページを超えます。
どんな話かもほとんど出来ています。
それでも最後のピースが見つからず、本公演に踏み切れないまま10年が過ぎました。

当時を知ってくれている数少ないお客様と役者仲間は今でも本公演を切望してくれます。
本公演の佐竹の脚本とお笑いサタケ道場の劇団員の芝居が観たいと。

今回はもともとは本公演ではなく、特別公演を予定していました。
つまり本公演のつもりではなかったのですが、とある理由により、これは本公演以外考えられないと思いました。

僕が本公演の脚本を書くときには大きく一つの感情が動いています。
激しく。
それは”怒る”という感情です。
色々なものに、自分に、見えない何かに。
僕は決して優しいから優しい本を書くわけではありません。
激しく怒っているからそんな自分への答えとして本を書きます。

こんないいかたをするとプロ失格と言われてしまいますが、だからこその本公演なのです。
主催公演なのです。
誰にも文句は言えません。
伝えたいことをやりたいメンバーで作る。

実は長年お笑いサタケ道場で看板女優を務めて来た、山本誠子が現在大きな病気にかかり闘病生活を余儀なくされています。
今年の5月に病気が見つかり約5ヶ月必死に病気と闘っています。

仕事もやめ、すべての出演もキャンセルし、再び舞台に上がりたいという目的のために。
山本には、山本が戻るまでは劇団員全員が揃うまでは本公演はしないと伝えました。
もともとは「SF野試合ガール」も山本は声の出演のみと考えていました。
芝居馬鹿の山本に少しでも役者として何かさせたいとの思いもあり、そう伝えました。

数日後、彼女から出演したいと相談されました。
お医者さんからも許可をもらったと。

病気の症状に耐え、薬の副作用に苦しめられながら、自分が出演するはずだった舞台を悔しい思いをしながら客席から観ていた、普段あまり自分の意見を言わない山本がどうしても出たいと言いました。

僕は山本の病気の快復を信じていますし、彼女もそのために頑張っています。
けれども、これが最後かもしれないという覚悟をもって舞台にあがろうとしています。
山本誠子はこの後、治療に専念するためにしばらくはお休みすると思います。
すぐ戻ってこれるかもしれません。
大分時間がかかるかもしれません。

その事を考えた時、この公演を本公演として行いたいと思いました。

体調の事もあるので無理はさせられません。
それでもわくわくします。

10年間つくったプロットは、もともとは人間に恋をしたドブネズミの話でした。
孤独なドブネズミが身の丈に合わない大きな花を抱えて大好きな女の人に渡そうとするお話。
当然、「野試合ガール」とは全然違います。
でも「SF野試合ガール」にすべてそのプロットの大切な部分を注ぎました。
もうネズミの話はやりません。
花を野試合用ウレタン刀に持ち替え、愛してるの代わりにぶった切り、それでも愛を叫ぶ。

お笑いサタケ道場本公演
裏切るのは劇団名だけ。

劇団員と素敵な客演陣が一丸となって作る作品に期待せずにはいられません。
これを見逃したら本当にいつになるかわからないサプライズお笑いサタケ道場本公演。

皆さまのご来場、心よりお待ちしております!

お笑いサタケ道場 代表 佐竹 仁